円山原始林を代表する樹のひとつ,「カツラ」.
カツラの特徴的な樹形は,蘖(ひこばえ:Basal shoot)と呼ばれる樹木の切り株や根元から生えてくる新たな芽生えから形づくられます.「ひこばえ(孫生え)」というのが語源です.
ほとんどのカツラの巨木は,主幹はもちろん,大きく育ったひこばえも時に折れ,傷つき,それを助けるようにさらにひこばえが芽吹き伸び,複雑な樹形を形づくっています.
家の近くに自分の分身のように大切に思っているカツラの樹があります.この木だけは,ひこばえが主幹にぴったりと寄り添うように一体化して共に真っ直ぐ伸び,枝を広げています.これは決して偶然ではなく,恐らく,回りの樹々や周囲の地形により長い間,守られてきたから,素直に真っ直ぐ伸びることができたのでしょう.人も,決して一人の力ではなく,多くの人に守られるのだということを忘れてはいけない.この樹を見て,そう思うのでした.
この木は,秋のほんの短い間だけ,「光輝く樹」になります.
Michio Nonaka