Mandy Harvey.彼女は,耳が全く聴こえません.膠原病のために18歳の時に聴力を完全に失い,いったんは音楽の道を諦めますが,歌っていた頃の体の感覚と音程が見えるチューナーを使って再び歌い始めました.そして,2017年”America’s Got Talent”という米国のオーディション番組で一躍,注目を浴びました.そういう美談とは全く関係なく,素晴らしい歌声と音楽です.澄みきった歌声に魅せられます.
そして,ケネディーセンターでのライブ動画(2013)です.
自分の声を聴くことができず,記憶を頼りに歌っているからか,一音一音,とても丁寧に壊れ物をそっと置くように音をつないでいく感じがとても素敵です.高音を出すときに,ほんのわずかに声が掠れ,そして揺らぐのが,とても儚くて,それが決して疵ではなく,魅力になっています.彼女の表情豊かな手話も相まって,最高にチャーミングです.
「サピア=ウォーフの仮説」というものがあります. 「使用する言語によって,世界観や思考の仕方が決定づけられる」というものです.
Mandy Harveyの歌う姿,彼女が語る様子を見ていると,言葉を選び,その言葉をどう話すかということが,その人を変え,生き方を変えるような気がします.とても丁寧に言葉を話す人で,とても聴きやすい英語です. 彼女の端正な話し方,歌い方が,彼女の生き方を表しています.
自分は,熱くなってくると,声が大きくなり,早口になって,時には,聴いている人を萎縮させてしまいます.なので,それに気がついたとき,そして,とりわけ大切な話しをする時には,意識して,言葉を選び,ゆっくりと,適切な間を置きながら,柔らかいトーンで話すようにしています.時には,沈黙し,相手に語ってもらうという態度をとるようにしています.専門的な文章を書くときも,ブログを書くときも,可能な限り言葉を吟味して選びます.粗雑な言葉を使わない.無闇に名称を短縮しない.文章のルールを守る.すり切れたような陳腐な言葉は選ばない.なかなか,難しいのですけれど.
Michio Nonaka