先日(9月2日)、仙台で神経難病の便秘治療について講演させていただく機会がありました。当院で便秘治療している患者さんの数としてはパーキンソン病がもっとも多い疾患となります。
便秘なんて、と侮ってはいけません。パーキンソン病患者さんでは7割近くの方に排便障害があるとされるデータもあります。また、便秘はパーキンソン病の先行症状として認めたり1、パーキンソン病発祥のリスクとする論文2もあります。
生活の質(QOL)を下げるだけでなく、パーキンソン病薬の吸収を妨げたり、重症ではイレウス(腸閉塞)を認めることもあります。
1) 消化管の運動機能が低下:消化管の神経叢の変化、治療薬の副作用
2) 便の排出困難:直腸と肛門括約筋の協調不全、腹筋などの運動機能低下(いきむことができない)
等が原因となりますが、一般の方の便秘と異なり非常に対応が困難な場合が多いのが現状です。食生活を含めた日常生活の改善を前提に、便性状(硬さ)、便周期なども考慮し、病態に合わせた治療薬が必要です(例えば、便を柔らかくするのか、あるいは腸管を刺激して動かすのか‥)。新しいタイプの薬も出ており、パーキンソン病患者さんで便秘を認める方はぜひ主治医とよく相談されることをお勧めします。
[写真1] 2017年9月2日仙台講演『慢性便秘症診療ガイドライン』を読み解く
[写真2] 演者、座長の諸先生とともに
* 1(Braak H, Rub U, Gai WPら J Neural Transm 2003 ; 10 : 517-36)
* 2(Abbott RD, Petrovitch H, White LR ら Neurology 2001 ; 57 : 456-62)
さて、神経難病と切り離しても、便秘に関しては、年齢とともに発症率が高くなることも知られております。『便秘は若い女性に‥』一般的にはそう思ってしまうかもしれません。でも実際は、高齢者、特に男性に多く認めます。
[写真3] 【平成25年国民生活基礎調査による便秘の有訴者数】
便秘は不快な症状とともに日常生活にも様々な制限、影響を及ぼします。
今回の講演では、消化器内科・外科の諸先生から最近の知見を深めるお話を伺うこともできました。便秘が他疾患のサインであることも多いです。
やはり、侮ることなかれ、便秘。
濱田晋輔