当院及びサテライトクリニックで道内初の医療用ロボットスーツHALが運用されて5ヶ月が経とうとしています。この間にも、HALは様々なメディアで取り上げられ、新しい治療に全国の患者さんが興味を持たれています。
去る1月28日、東京で『新しい難病治療を知ろう!』HAL一般市民向け公開合同報告会が開催されました。会場は全国からの聴講者でいっぱいで、HAL開発者である筑波大学山海嘉之先生の講演、神経難病に対するHAL治療の第一人者国立病院機構新潟病院中島孝先生の臨床的な応用も含めた講演など盛りだくさんの報告会でしたが、今回最も驚いたのが、『サイバニックスイッチ』の報告でした。
脳から神経を通じて筋骨格系に送り出される指令は、「生体電位信号」として皮膚表面から認識されます。HALはこの信号を認識して装着者の運動をアシストしたりします。『サイバニックスイッチ』は、このHALの持つ生体電位信号から随意運動を検出する機能を応用した「新しいスイッチ」です。具体的に言うと、手指を動かすことができないALS患者さんでも、その腕にこのスイッチを貼付して、そこで生体電位信号を認識し、パソコン上でマウスを用いるような感じで文字入力などを可能にします。体を動かさずに意思伝達を可能にしているのです。ALSなど進行性の四肢麻痺患者さんは、病態の進行とともに常に意思伝達手段が問題となりますが、このスイッチは革新的な発明と思います。
理論的には可能かもしれませんが、何より驚いたのは、今回、「このスイッチが神経難病患者さんにより実演」され、年内に「実際の臨床現場に用いることが可能になる予定」との報告があったことです。
サイバニックスイッチ開発プロジェクトメンバーのイアノフさんからも直接お話を伺い、実機も確認しましたが、負担も少なく、大変興味深い発明でした。(サイバニックスイッチの写真も撮影させていただきましたが、まだ市販前なので実機の写真をweb上に載せるのは控えてくださいとお願いされました。日本語も上手な方でした。)
このスイッチは、難病患者さんだけでなく、多くの患者さんと世界を結ぶスイッチになるのではないかと強く期待します。『新しい技術が医療と未来を拓(ひら)く』のを改めて感じます。