concussion

「concussion」、神経学用語集では「脳震盪(のうしんとう)」。

 Wikipediaでは「頭部に衝撃を受けた直後に発症する、一過性および可逆性の意識や記憶の喪失を伴う状態」となっている。なんだか出だしから小難しくなってしまった・・・。

 2016年のウイル・スミス主演の映画「Concussion」。医学に関連した映画や小説はいろいろあるが、これもその一つ。実際の話をもとにつくられた。

 ナイジェリア出身のDr. Omaluは神経病理専門の医師で、検死官をも務める。ご遺体に語りかけ真摯に死と向き合う。アメリカで認められることを夢みて渡米したが、元フットボールプレイヤーの剖検報告をきっかけに、アメリカ最大級の娯楽であるフットボール界に一石を投じてしまうことに。いや、一石以上の波紋となる。

 最初の報告は「Chronic traumatic encephalopathy(CTE:慢性外傷性脳症)in a National football League player.」というタイトルで、2005年Neurosurgeryに掲載された。引退して12年の元花形フットボールプレイヤーで、44歳時に自害。生前に記憶障害、気分障害、パーキンソン症状があった。アルツハイマー病とはやや異なる分布で、広範囲な大脳新皮質の神経細胞脱落、びまん性のアミロイド斑などを認め、繰り返す軽症の脳外傷が長期的には神経変性をもたらす可能性があると警鐘を鳴らした。フットボールとCTEを関連づける最初の報告となった。

 次の報告は2006年、さらに2010年、2011年と報告した。大企業NFLからの圧力、人種差別、何度も繰り返される嫌がらせ電話、奥さんの流産・・・。FBIもでてきて上司は別件で起訴され、新築中の家を手放し、本人の居場所も・・・。ひどい、ひどすぎる! 許せない、こんな事。

 彼の上司も何かと皮肉を言うのだけれど、Dr. Omaluを最も理解しサポートしてくれ、あげくは自分が去ることで彼を助けた。奥さんも彼の正義を信じて、つらいことがあっても前に進めと力強い。陽気なDr. Omaluがだんだん寡黙になる。しかし真実を伝える言葉は力強く、NFLを動かしていく。がんばって! 私はここにいて、あなた達の証人となっている。

 フットボールとCTEをPubMedで検索すると2013年から報告が飛躍的に増え、2016年にはreviewも多数みられる。YouTubeでも彼の声を聞くことができる。2013年の視聴回数は12万回超え。

 そして映画はまだ問題が潜在していることを暗示するかのように終わり、見終わった後も心臓がバクバクして、エンデイングの「SO LONG」を放心した状態で聞くことになる。こんな時は気分転換に楽しい音楽でも聴こう・・・。そう、SHINeeのDream Girlでも。これはこれで、別の意味でドキドキするのだけれど(笑)。

                                         S.H.

広報企画室

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