FUS-本態性振戦・パーキンソン病の新しい治療への挑戦

12月上旬における積雪65cm以上(札幌)を29年ぶりに記録した12月10日、札幌駅前アスティ45で、本態性振戦、パーキンソン病の新しい治療に関する講演会が開催されました。【震えやパーキンソン病に対する切らない手術『FUS』】、演者の一人として私、濱田も参加してまいりました。
FUS(MRガイド下集束超音波治療(MRgFUS))は、本態性振戦、振戦優位のパーキンソン病に対する新しい治療として注目を集めております。
帯広の北斗病院は、2015年に道内で初めて本態性振戦に対して臨床試験を開始(国内でも3番目)、パーキンソン病の患者さんにも応用されています。

「MRガイド下集束超音波手術」(MRgFUS)について

(北斗病院ホームページより)

MRガイド下集束超音波手術(以下FUSと表記いたします)技術の世界的リーダーであるイスラエルのインサイテック社(InSightec Ltd.)が開発したエクサブレートニューロ・システム(ExAblate Neuro・system)は、切開、切除、電離放射線なしで脳深部の組織を治療できる非侵襲的治療法です。
脳内の治療に集束超音波を使うというコンセプトは何年も前から認められていたのですが、頭蓋骨という大きな障壁を通過して、これを実現するには多くの技術的障害の克服が必要でした。技術的な革新により、集束(虫メガネの要領で一点に集める)超音波技術とリアルタイムにMRIで1mm以下の誤差で正確な位置決めを行い、同時に脳内の温度をモニター(推定)することが可能になったことで、頭蓋骨を切ったり、穴を開けたりせずに、標的部位に数mmの熱による凝固巣を作るだけで、脳神経にかかわる病気の治療を行えるようになりました。

本態性振戦、パーキンソン病に対しては、現在、DBS(脳深部刺激療法:保険適用)など外科的な治療の有効性が確認されており、日本神経学会編集の診療ガイドラインにも選択肢として言及されております。ただどうしても手術が必要となり、ご高齢の患者さんをはじめかなりの抵抗感を皆さん訴えられます。FUSのメリットとしては、開頭などの外科手術が不要で、感染症、出血等のリスクが低いことが挙げられます。開発を担当したINSIGHTEC(インサイテック)社のホームページに日本で先進的にこの治療に取り組まれている東京女子医科大学平孝臣先生の動画があります。動画(英語表記です)

北斗病院では、実際の患者さんに施行された様子、患者さんの感想を動画編集されております。 動画  現時点では、自費診療であり、制限もありますが、新たな治療として今後かなり高い期待がよせられております。上記、「パーキンソン病」につきましてはいまのところ臨床試験進行中の段階でして、いまだ自費診療も行われておりません。 ただし、「本態性振戦」については自由診療が可能となっております。
ご興味のある方は、北斗病院のホームページに詳細が掲載されておりますのでご覧になってください。
パーキンソン病に対する内服治療の研究、開発は日進月歩、著しいのですが、リハビリテーション、外科治療分野でも新たな取り組みが進んでおります。当院で採用されているHALを用いたパーキンソン病に対するリハビリテーションも臨床試験レベルで報告があります。
現在、なかなか病状が思うようにならず、悩まれる患者さんも多いと思います。医療は飛躍的に進歩しており、新しい治療の芽は様々なところで芽吹いています。決してあきらめずに一緒に頑張りましょう!

 濱田晋輔

*写真1 FUSの講演会記事

*写真2 FUS講演会の写真

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